マーティンローガンCLSIIのユニットの洗浄
このページに書かれていることを真似る際には、全て自己責任にて行なってください。
このページに書かれていることを真似て、スピーカユニット、スピーカシステムあるいは
オーディオシステム全体の故障を起こしたとしても私は責任を取りません。
ここに書かれていることは、マーティンローガン社およびその代理店との保証契約
に違反することですので、真似をして、保証が受けられなくなっても私は責任を
とりません。
また、ユニットを洗浄しても、能率は元には完全に戻らないでしょう。また、左右
のユニットで、異なる能率になる可能性もあります。以下で述べますが、ここで書かれたことは、
どうしようもなく能率が下がって手が付けられない(もう買い替えないと仕方がない)
レベルのユニットを何とかできないかと困っている人が参考にしてください。
コンデンサースピーカについて
通常使われるスピーカはダイナミック型のものが多いですが、スピーカには
これ以外にも多くの動作原理をもつものがあります。そのうちの一つにコンデンサー
型があります。コンデンサー型の歴史は古く、ダイナミック型と同等あるいは
それ以上の歴史をもちます。
現在、日本で入手可能なコンデンサー型は、
・マーティンローガン
http://www.stellavox-japan.co.jp/
・ファイナル
http://www.teac.co.jp/av/
などがありますが、以前は、STAXやSONYも製造していました。
コンデンサー型のユニットの原理は、2つの固定電極の間に
振動膜を張り、固定電極に音楽信号を、振動膜に高圧(CLSの場合、約5000V)を与えて、クーロン力
で振動膜を振動させ音楽を発生させます。
そうすると、固定電極と振動膜の間に埃などが入り湿気などを帯びると、
静電気が逃げてしまい、スピーカの能率が下がってしまいます。
そのため、多くのコンデンサー型ユニットは固定電極外に極めて薄い保護膜
をかぶせています。
マーティンローガンのユニットは保護膜がないので、他社よりさらに埃、湿気を嫌います。
しかも、 CLSは、フルレンジのユニットであり、同社の他のユニットより振動膜
と固定電極の間隔があり、埃が入りやすい構造になっています。
日頃のメインテナンスとしては一週間に一度、クロスで木枠、ユニットを拭きます。
クロスは毛が起たないものがよく、マーティンローガン社のオンラインショップでも
売っています。このクロスも、2、3度洗浄すると毛が起ってくるので最適とは
いえません。東急ハンズの掃除関係のコーナにある、赤色、青色などのクロスがありますが(製品名わからない、
今度みてきます)、とてもよいです。
それ以外には、ユニットに掃除機をかけるのもよいことです。
それでも、段々と能率が下がってきて、特に梅雨時期にはとことん能率が下がります。
昨年あまり手入れをしていなかったこともあり、今年の梅雨にはかなり能率が下がりました。
手持ちのマグネパン1.5(能率86dB)で少し大きめの音量でなっていた状態で、 CLSに
切替えたところ、蚊の無くような音量しか出ません(アンプが壊れたかと思った)。
おそらく能率70dBは軽く切っていたと思います。このくらいの能率になると、
出力がでないアンプは簡単に気絶(保護回路が働いてアンプが停止してしまう)します。
出力がでないといっても100Wを越えるアンプでも簡単に気絶します。
一般にコンデンサースピーカは、電流供給能力の高いアンプが必要だといわれますが、
この状態になると、それ以前に絶対的なパワーが必要になります。
一般にはユニットがこのようになったら、ユニットを入れ換えます。ユニットが手に入れば、
以下の手順を真似れば一人でユニット交換ができますので、参考にしてください。
以下では、さらにこのような状態になったユニットを復活させられないかと思案している
人に参考にしてもらうためにユニット洗浄の手順についてまとめます。
多くのコンデンサ型スピーカでは、高圧を発生させる回路からユニットの間に、平滑用の
高抵抗(CLSの場合、15Mオームの抵抗2つを直列)があります。この抵抗が、何らかの
原因で故障し、(完全に断線すれば音がほとんどでなくなって分かる)片方だけ能率が
下がる場合もあります。もし、それが原因の場合抵抗を交換すれば直ります。これらの
高抵抗は、秋葉原のラジオストアの CR(お店の名前)などで、扱いがあります。
CLSIIのユニットの洗浄手順について
CLSIIの電源ケーブルを外し、2,3日放置して、静電気を放電させます。待てない人は
後で手順を示します。
スピーカを購入したら附属品として、専用のドライバがついているので、それを
つかって、インターフェースユニットを外します。ユニットと木枠ならびにインターフェース
ユニット間はコネクタでつながれているので、それも外します。
ユニットと木枠を、ケーブルが出ているところが下になるように縦かけます。

ケーブルの末端に接続されているコネクタを外します。マイナス(フラット)ドライバ
で外してください。電源ケーブルを外してすぐ作業したい人は、これらのケーブル間に静電気が
発生しているので3本の電極を触れさせて放電させてください。それほど大きな
電荷ではないので、触れればパチといってすぐに放電します。

横向きに立てた木枠に馬乗りになります。足が届かない場合は(^_^)台を用意してください。
ユニット前面に手の平をあて、ユニットの湾曲がさらに湾曲するように体重をかけて押します。

このように白い線がみえます。ユニットが木枠から外れている状態です。一度に全体は外れない
ので、上半分あるいは下半分から順に外していけば、一人でユニットを外すことができます。

ユニットを木枠から外した状態。

ユニットから伸びるケーブルの末端に水が入らないように処理します。2重にしたサランラップを巻き、
根元をビニールテープで巻いて固定します。

中性洗剤を10倍くらいに薄め、スプレー容器に入れます。このマジックリンはアルカリ性で、
実際に使ったのは食器洗い用の洗剤を使いました。私が使ったものは泡切れが悪く、よく
ありませんでした。なるべく泡切れのよいものを使ってください。
容器に6割くらいはいっていますが、ユニット2枚で全て使い切りました。

できれば、屋外で行なったほうが作業は楽ですが、今回はお風呂で洗うことにします。

上から下に向かって洗剤をかけます。

前面が終ったら背面を同じようにします。

次にシャワーを使って水をかけます。お湯は止めましょう。シャワーも上から下にかけていきます。
特に注意するのは、ユニット背面の左右に
ある低域用のイコライザ(濡れると若干白くなるテープ)には、あまり水を長時間かけたり、
シャワーを直接かけないようにします。このイコライザは、接着剤で固定電極に張り付けられて
いますが、これが剥がれたらそのユニットは終り(かまたは、ユニット全体をばらして、
張りなおし)です。

洗剤を流し終ったら、ユニットを持ち上げゆすって水を飛ばすようにします。
吸水性のよいペーパタオルで、水を吸い取ります。このさい、擦らないように
します。紙の繊維が残ると元の黙阿弥です。
今回はペーパタオルを半巻くらい使いました。

固定電極の穴に残った水膜がだいたい取れたら、陰干しします。だいたい一週間から
一月で乾くでしょう。しばらく下部から水分がでますので濡れてもいいところに新聞を敷いて
立てかけて置きます。できれば一日おきに上下をひっくり返します。この手の振動膜は
紫外線を嫌いますので、日向において乾かすのは厳禁です。
乾いたら、上記の手順を逆にたどってスピーカを元の状態にします。かなり能率は元に
戻るでしょうが、完全には戻る保証はありません。また、左右同じ能率にならない
場合もあります。
ユニットが乾く間に、木枠をクリーニングしておきましょう。ユニット同様、かなり
埃がついているはずです。
私は、アルコールを使いましたが、クロスが真っ黒になりました。 CLSの表面は、
木目に沿って亀裂があり、通常のワックスを擦り込むとへこみにワックスが溜り
見た目が良くないので、
液体ワックスなどのほうがいいでしょう。
聞いてみる
洗浄から2日間ほどは下部から水が出ましたが、3日後からは見ために水分が消えた
ように見えます。洗浄から一週間経って、組み立て、音出しをしました。
マグネパン1.5(86dB)から2〜4dBほど低いですが、洗浄前と比べると
格段に音圧は上がっています。まだ梅雨が開けておらず、湿気はすごい状態ですが、
ほぼ問題ない状態に戻りました。左右のレベル差も若干ありますが、調整可能な範囲
です。
洗浄前には、埃によりピーピー鳴っていたノイズが全く消え去っており、
埃が取りはわられたことが良くわかります。
kitamiti@u-aizu.ac.jp